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2014年をふり返っておきます。長文ご容赦ください。

今年は、研究面では「発酵」の一年であったかなという気がします。ただ、それが「熟成」するにはまだまだで、自己評価はそこそこといったところです。来年以降もっと計画的・生産的な生活にしたい。

1. 書いたこと

研究では,3本の論文を発表し、寄稿した2冊の書籍が刊行されました。その他、昨年12月のARCLEシンポジウム(高校入試分析研究)の報告書が発行され、三省堂のTEACHING ENGLISH NOWと「英語で授業」に関する小冊子にそれぞれ短い文章を寄稿しました。

論文の1本は、文法指導の研究方法論にかかわって、メタ分析の手続きについて、残り2本は静岡大学での実践に基づいて、教師教育における研究法指導の内容・方法について考察したものです。

書籍は、『英語教師は楽しい』に「英語教師はつらい」という文章を書きました。もう少し正確に言うと、英語教師の置かれている状況を正視し、「楽しさ」がどこから来るものかを教育学的に考察しようとしました。ここに書いたことは、教員養成に携わるようになってより強く感じていたことで、学生にも伝えたいと思っていたことでした。もう一つは『教育方法学研究ハンドブック』で、戦後の日本の英語教育実践を概観し、成果と課題を展望する(6ページの中で)という、困難なタスクに挑みました。どの程度役目を果たせたかは読者の評価を待つのみですが、学生・院生時代から学び考えてきたことを多少なりとも整理・統合できたかなと思います。教育方法学に外国語教育研究を専門とする人はそう多くはありませんが、学生・院生のみなさんの研究の参考になることがあれば幸いです。いずれも、貴重な機会をいただいたことに感謝しています。

他に、共著で論文を1本投稿中、学内の紀要で、静岡大学での実践に基づく報告が印刷中のものと執筆中のものと1本ずつです。その他、翻訳のお仕事をいただいたりしていますが、個人として論文をもっと書きたい、書かねばと感じています。共同では、進めている出版の企画に思ったよりも時間がかかっていますが、着実に形が整いつつあるのと、同時並行で他に2冊の企画について編集のお役目をいただいています。共同研究のほうは段取り的なことを意識するとそれに終始してしまいがちなので、個人研究での集中作業とうまくバランスをとりつつ、創造性を発揮して実らせたいです。

2. 話したこと: 発表

学会・研究会発表は4本(内2本は協同発表)で、科研が通らなかったこともあって出張は控え目にしました。不採択になった発表もあるので全てが予定通りだったわけではありませんが、国際学会等で早めに動かなければならないことと(主として単年度会計の)予算の見通しとの折り合いをつけるのに難儀しています(後述のAILAの参加については幸い学内の助成を受けることができたので助かりましたが)。

今年、個人として最も大きな経験となったのは、Brisbaneで開催されたAILA World Congress 2014でのポスター発表です。研究者として会いたい人に会い、話を話を聞きたい人と直接やり取りすることができました。Brisbaneは気候も街も人も過ごしやすく、期待していた以上の充実した1週間となりました。3月には調査でイギリスに行くこともできました。ロンドンは3度目でしたが、Birminghamの知り合いを訪ねたり、Oxfordでシンポジウムに参加したり、ひたすら楽しみました。主としてデータ分析面での貢献になりますが、日本教育行政学会での(今年4月から兼任している教員養成・研修高度化センターの先生がたとの共同)発表に名を連ねたことも、新鮮な経験となりました。こうして、色々な機会をいただけるのは有り難いですね。

せっかく参加するなら発表したいと考えてしまうのですが、今の心持ちとしては、解説的・営業的な発表をするよりは、本当に面白いと思える発表を聞きにいって、がしがし議論できる人たちの集まる場所でやりたい。最近はLET関西支部メソドロジー研究部会が私にとってそういう場所で、国内はそれで十分かなとも思います。国際学会については、先ごろ共同発表が採択され、来年はベルギー・アントワープを訪ねます(またしても予算の問題はあるけれど)。満喫するために、分析をがんばります。

3. 話したこと: 講演・ワークショップ等

あとは講演・ワークショップ講師等が12本、コーディネーターとして2つの研究会・セミナーを主催しました。どれも得難い経験となりましたが、広島大学外国語教育研究センター外国語教育研究集会にお招きいただいたのはやはり忘れられません。以前に手をつけて放ったらかし気味になっていた「外国語教育における協同学習研究」について整理し直すいい機会となりましたし、ICTの活用についても実践的・理論的により深く考えることができました。メインの研究テーマではありませんが、どこかで論文の形にしないといけないなと思っています。

中部地区英語教育学会の静岡地区運営委員となりました。3月に開催した静岡地区の研究会には予算もないのに呼びたい人を呼び、私にとってご褒美のようなとても楽しい一日でした。評価は今後どう継続できるか次第ですが、コーディネーターを引き継いだ研究法セミナーも、先輩・後輩の助力を得て第二幕の良いスタートが切れました。いずれも、私のわがままに付き合ってくださる皆さんにただただ御礼申し上げるばかりです。

今年は、高校の生徒・先生と交わる機会が増えました。7月に中学校の修学旅行以来の青森にお招きいただいた他、平成26年度教科等指導リーダー育成事業の講師として複数回、静岡県内の高校の授業を参観し、先生方に講義・演習を行う機会を得ました。別のところでも書きましたが、その際、帯同した院生・学生の参加を快く受け入れてくださり、研究協議も含めてきちんと「参加」させていただいたこと、感謝に堪えません。加えて、前期の半年間、現役の高校の先生を研究生として受け入れました。私が担当する全ての授業・ゼミに「学生」としてフル参加してくれたその先生の頑張りにまず脱帽し、私自身も刺激をもらったのですが、院生室で机を並べた院生には授業内外で多大なる影響があったのは間違いありません。

上述の『英語教師は楽しい』に、「新人教師が時間をかけて育ち、その成長を支援する中で中堅・ベテラン教員もまた自らを省みるような仕組みを構築・継承しない限り、英語教師という仕事が、たまたま能力や環境に恵まれた個々人の自助努力や運のレベルを超えて『楽しい』ものとなることはないだろう」(p. 146)と書きました。私としては、以上の活動を通じて、慎ましいながらもその「仕組み」づくりのお手伝いができたかなと思っています。

呼んでいただいた皆さん、協力していただいた皆さん,ご参加いただいた皆さん,本当にありがとうございました。あんまり大人なふる舞いはできませんが、何でもやります。また呼んでください。つまらない依頼はしませんので、依頼はどうか断らないでください。

4. ゼミや授業

ゼミは、2月に三重・名古屋へのゼミ旅行を実施し、今年も9月には信州大学・酒井英樹先生のゼミとの合同ゼミ合宿を開催することができました。今年は、LET中部外国語教育基礎研究部会の院生をゲストに招いて、これ以上ないというぐらい良い刺激を与えることができ、非常に実りが多かったです。今年は静岡開催でホスト役だったのですが、観光の企画もゼミ生ががんばってくれました。

学会・研究会とのコラボも大学教員としてやりたいと思っていたことの一つですが、何故かといえば、旅費の補助が簡単にはできず、学生・院生を外に連れていくのが難しいからです。それでも今年の6月には、山梨で開催された中部地区英語教育学会に複数の学生・院生を連れていく(正確に言うと私を連れて行ってもらう)ことができました。この経験で火のついた院生たちは(私がBrisbaneに行っている間に)徳島で開催された全国英語教育学会にも参加してくれたらしく、勝手に泣きました。百聞は一見に如かず、100回のゼミは一回の学会に如かず(ただし良い学会に限る)。

授業と附属中学校との共同研究については、3年目の深化を感じることができました。その報告は年度末のまた落ち着いた頃にでも。

5. そのほか

年初に体調を崩して副鼻腔炎を再発・悪化させてしまい、吸入薬なんかも使うハメになって、快復までだいぶ時間がかかりました。7月にも咳がずいぶん続いて、今年はそれでずいぶん気も滅入ったのですが、そうしたことを察して「体は大事にせなあかんよ」と折にふれ気にかけてくださった先生の突然の訃報に接し、未だに心にはぽっかり穴が空いたままです。念願かなって講演を聴くことができたGeoffrey Leech先生もその後間もなくの訃報でした。悲しいなあ。

返しきれない学恩ですが、忘れず、少しでも研究・教育で返せれば。うーん、まだまだ。

 

それでは、また来年もよろしくお願い申し上げます。