誰が使い出したのか正確なところは知らないのだが,第二言語習得研究ではform-meaning mappingという言い方をする。教材や教師の言葉,言語活動中のやりとりを通じて理解可能なインプットに触れる過程で,言語形式とそれが表す意味との間に対応関係が形成されるということらしい。
母語獲得の場合と第二言語習得の場合とでは「写像」の様相はずいぶん異なるように思うのだが,それ自体は「(L2)言語習得」(の過程・結果)を捉えるための一つのモデルとして了承できる。ただ,「写像」という数学的概念を使う割には(全射であることは前提として)単射を想定しているのかそうではないのか,可逆なのかそうではないのか,よく分からない。モノ(特にSLA研究の理論に基づく実践報告等)によっては,単に「結びつき」という意味でこの用語を使っているケースも散見される(無理にmappingと言わず,connectionやrelationshipを用いればとりあえずは解決する)。
Bolinger (1977)の「形が違えば意味も違う」という立場からすれば,この写像は全単射として仮定されることになるが(以前書いた「『形が違えば意味が違う』のその先へ。」を参照されたい),Bolinger (1977)で説明されているような「意味の違い」は,form-meaning mappingという用語を用いる人が言わんとする意味とはずいぶん意味が違うように思う(ややこしやー)。