Pocket

法助動詞WILLの扱いについて。アメリカはNew Hampshireで下ネタを叫ぶために,英語教育を変えるためにガンバるたむさん(@tam07pb915)への,僭越ながら「手え出したら仕舞いまでやる」という釜爺精神的返答記事。

前段は,【授業】助動詞のwillをbeginnerレベルの生徒にどう教える?他を参照されたい。

Twitterでは,とにかくプレゼン頑張れと思って皆まで言わなかったのだが,実は問題設定の意図がまだよく分かっていない。つまり,なぜ「初学者に法助動詞willを教える」のか。より具体的に言えば,なぜwillのみを扱うのか,どういう学習を経て来た初学者で,次にどういうことを学習する計画なのか。自分が参加するゼミであれば,最初にそういうことを訊くだろう。

結論から言えば,「どう教えるか」の前に「何を教えるか」の考察が必要だろうと思う。具体的には,

  1. ここで導入を意図しているのは,未来時の表現としてのWILLなのか,法性(modality)の表現としてのWILLなのか。
  2. Spontaneous decisionを最初に,また中心的に扱うべきなのかどうか。
  3. 「WILLを非体系的・個別的に, {意志〉あるいは〈未来性〉を表す語葉項目として語葉教育の領域において導入する」(大竹 2004: 1)のでなければ,現在時制やBE GOING TOとの(法性の表現としてのWILLであればMAYやCANとの)対比が不可欠ではないか。

といったことだ。

まず,「未来時表現の指導の中で予測用法の wilを取り扱った後 に,法助動調の指導の中で推測用法の wilも取り扱い,WILLの本質的意味を教えるというのが妥当な順序であるように思われる」(大竹 2004: 6)という立場からすれば,

またそれとは変わって、未来というよりは助動詞にfocusした用法として、3番目にあげているProbabilityがあります(スライドの例文参照)

これはさすがに、別に助動詞のmayやshouldなんかと一緒に可能性への言及という点で教えるのがいいと判断しました。また、beginnerレベルの生徒にとってはその助動詞の使い分けよりもむしろ未来に言及する用法の方が実際の使用頻度も高いだろうという想定です。

という判断は適切だと言える。

次に,2.の問題を措けば,「勉強するつもりで図書館に来たら、実は閉まってた!Then, …」という状況設定はWILLの必然性を担保しており評価できる。その場にいたら,「サスガっすね,たむさん」と声をかけたことだろう。ただし,そこで「じゃあ,プールでも行くか」(独り言?)と続ける時,WILLが果たしている役割を際立たせるためには,(現在時制の意味・用法がどの程度既知かはともかく)”I go to the swimming pool.”との対比が必要になるし,学習者も気になるところなのではないか。3.に挙げたのはそういうことである。

語彙項目として「WILLってのがあるんだよ」と導入するためのセクションであれば,この導入(と類似の状況設定をいくつか)で,複数の動詞と組み合わせて法助動詞の形式的特性に慣れてもらうことでいいのかもしれない(個人的にはあまりソソラレないが)。問題は,たむさん自身が注意点として指摘しているように,様々な動詞でWILLを含む文を作る活動・練習をしている内に,学習者からI will go snowboarding next weekend.のような(Future Predictionの)文が出てきた場合にどうするかである。

私は,「初学者」であれ,未来時の事態に対する予測を扱う以上は,現在時制やBE GOING TOとの違いが理解できるようにすべきだと考える。さらに言えば,一人称以外の主語の場合の問題を考えると,spontaneous decisionの意味がWILLの導入の中心である必要は必ずしもないと思う。

WILLとBE GOING TOの対比の仕方については,Carter et al. (2000)の次の練習問題が参考になる(Carter et al.: 2000: 25)。

3. Think of situations when you might say the following.

a) I’m going to have a headache tomorrow morning.

b) You’ll get about five thousand pounds for it, I should say.

c) You’re going to get a letter tomorrow.

d) You’ll get a letter, and they’ll probably invite you for an interview.

つまり,それぞれの文を言いそうな状況を考えさせるのである。Carter et al. (2000)自体,中上級者向けとされているし,「初学者」には難しいという声もあるだろうが,中学生でも,私はこういう問題をグループ・全体で議論してもらいたい(a)をすぐアルコールと関連づけて理解できる中学生がいたら逆に心配だがw)。この時点では,「一般的予測にはWILLを用い,その予測が何らかの形で現在と結びついている時はBE GOING TOを用いる」という程度の観察があれば良いのだし。もちろんCarter et al. (2000)には他にも,会話の中でいずれかが用いられている理由を考える問題や,前後の情報を手がかりにどちらを用いるかを考える問題がある。

ちなみにCarter et al. (2000)の例を借りれば,spontaneous decisionに関わる意味・使用を,(例えばみんなで遊んだ帰りに)次のどちらを言うべきかといった問題で語用論的側面から導入することもできる。

  • e) I’ll drive.
  • f) I’m going to drive

つまりe)の場合,聞き手にはこの提案に対する応答の余地があるが,f)の場合は選択の余地がないように聞こえる(Carter et al.: 2000: 23)。「私が運転します」というのは,どうでしょう的状況ならそれ自体けっこうな申し出だが,他者と共に意思決定をしようとしている場面なら,f)は相手が意見を持つことを認めていないように響いてしまう。もちろんここまで踏み込む必要があるかどうかは授業者の目標と計画に依存する。私なら,この辺の話は最後にまわすかなと思う。

Anyway, he will become a “big-name” teacher in TESOL, without doubt.

参考文献