Pocket

先日、Twitterで子安先生とやりとりしたおかげで、感想の聞き方返し方について色々考えることができた。多謝。少しばかりここにまとめておく。

以下の記述は全て、専門学校・大学の週に1コマの授業での話である。当然ながら中学や高校では同じように行かないだろうし、大学でも週に2コマ開講される——授業と授業の間の間隔が短い——形態となれば、話は変わってくる。受講者数は、授業者の負担を除けば、それほど決定的な要因とは考えていないが、ここで述べているのは最小で3人、最大で80人×2クラスぐらいの話(専門学校で50人×4クラスってのもあったか…)。

さしあたり、感想の聞き方について、毎回異なる用紙に記入してもらう方式を「単発型」、同じ用紙に記入していってもらう方式を「蓄積型」と呼ぶことにする。感想の返し方については、一人ひとりに各自の感想を返すやり方を「個別式」、何らかの形で(名前を挙げて、あるいは挙げずに)全体に返すやり方を「集約式」と呼ぶことにする。

さらに感想を返す際の授業者のコメントについて口頭式と配布式を分けることもできるが、実際には、プリントに記載した感想のいくつかをスライドに表示し、口頭でコメントを添えたりするので、それほど意味のある区別とは言えないだろう。しかし、口頭のみで済ますか、配布して残る形にするかという選択の問題はある。

私の場合、教育学系の授業・演習はこれまで、感想の聞き方は単発型で、毎回B6〜A4サイズの用紙に授業終わりに記入してもらう。返し方は集約式で、観点別にまとめて次回の配布資料に記載する形態である。単発型でなければならない理由はないが、どうしても記述量が多くなるため、蓄積型でやるとすればノートのような形態になるだろう。

さらに、教育学系の授業・演習に関しては感想を聞くことよりも返すことに重きを置いているということがある。

各回の授業において、学生は資料の内容や私の説明について不明な点が残っていること、誤解していることが少なくないが、感想を聞くことでそれが把握できる。しかし、寄せられた疑問とそれに対するコメントは、その個人だけに返すよりは全体で共有したい。おまけに、私の解説よりも他の学生の感想を読む方が学生たちにとって分かりやすいということも間々ある。次第に「『…』という感想を読んでよく分かった」などというコメントが寄せられるようになり、配布資料が掲示板のようになっていく*1。

そもそも50人〜80人ぐらいの規模になると特に、授業中に内容を自分なりに咀嚼して、他の人と意見を交換するということはなかなか難しい。意見がわれるような問題・選択肢を用意して、それぞれについて何人かの代表意見を聞くのがせいぜいである(場合によっては、グループを組織してグループごとに見解をまとめてもらうという作業を行なうことも可能だが)。だから、様々な角度で、自分と同じ見解・自分とは異なる見解に触れてほしいこともあり、集約式で配布する過程を重視したやり方を採っているのだと言える。

私の場合、集約した配布資料に個人名は挙げない。挙げないが、感想を見れば本人には自分の感想が載っているのは分かる。ラジオのハガキ職人よろしく、私のコメントや他の感想とかみ合って授業に貢献したことを感じてもらえればいいなあと思っている。実際、回を重ねるごとに、上述のように誰かの感想を引いていようがいまいが、他の人に読まれることを意識した感想は増えてくる。この辺りは、仮説実験授業の考え方に学んでいる(例えば、板倉 1988)。

英語の授業については、これまでは同様に単発型で感想を聞いていたが、聞き方を蓄積型、返し方を個別式に変更した。単発型でもらった疑問や意見を授業改善に活かしてきたとは言え、これまでの返し方は個別式とも集約式とも言えず、半ば「感想取りっぱなし」の状態になっていたからである。

これまでも、疑問や意見が出されれば次の回の授業で触れてきた。しかし、分かったこと・分からなかったこと、でき(るようになっ)たこと・でき(るようになら)なかったことについての学生の感想の多くは個人的なもので、上述したような意味で集約して返すことが有効だとは思われなかった。少なくとも私が接している学習者については、むしろ、そうした学習過程・結果についての振り返りの様子を確認し、学習内容・方法についてアドバイスをしたり、励ましたり、不安に理解を示したり、誤解や過剰な反応をたしなめたりする、そういうやり取りを個別に行なう方が感想を活かせるのではないかと感じて至ったのが蓄積型・個別式だと言える。

具体的には、半期の授業回数分をA4の色紙表裏一枚に印刷して、毎回コメントや質問を書いてもらい、それに対する私のコメントをつけて次の回に返す。授業改善や研究の目的で言えば最終的にはスキャンして保存することができ、一方で感想・コメントを蓄積したシート自体をきちんと学生に返せるのがいいと考えている。

やってみてぼんやり思っているのは、前の感想があると、学生の書き方も量的・質的に変わっていくし、それがこちらにも見えやすくなるのではないか、ということである。単発型・集約式において共有を前提とした記述の深まりが見られることに触れたが、同じようなことが蓄積型・個別式にも当てはまり、さらにはその跡をトレースしやすくなるのは大きな利点だと言える*2。

さらに言えば、必ずしも英語を学ぶことに胸を躍らせているわけではない、むしろ不安だらけでアイミスユーな学習者にとっては、「学習過程・結果に対する自己モニタリングとそれに対するフィードバック」という往還の作業を授業者と共有していること、そういうチャンネルが担保されているということ自体が、けっこうな意味を持っているように思われる。

*1 (同一科目の)複数クラスの感想を集約することで、意見に広がりが出て授業者としては助かった、というケースもある。

*2 現時点ではそんなところだが、蓄積型・個別式のやり方で、有益な感想を全体に返す方法についても色々試してみたいと考えている。学生とのメールでのやり取りも勿論あるが、Webを通じて感想を聞いたり返したりしようという気持ちは今のところない。全員がiPadを持っているとか、そういう状況なら考えることもあるのだが。。。