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予告を見てもらうと分かるが、ストーリーはなんてことはない。広告で賞金が当たったと思い込んだ老いぼれ酒浸りの父親が、モンタナ州Billingsからネブラスカ州Lincolnまで行くと言ってきかない。一度連れて行けば面倒も起こさなくなるだろうと、次男がしぶしぶ車で連れて行こうとする…という話。

「下ネタ」はこれぐらい老成すると本当の意味でユーモアとしての味わいが出る。こんな感じで、お母さんがあけすけな物言いで非常にイイ味を出してるのだが、「なんで結婚したの?」に対してぼそっと”Have to.”、「じゃあ、なんで子どもを作ったんだよ!」に対して”I don’t know!”、更なる追求に”She was there!”と、お父さんの少ない言葉でのキレ味も秀逸だ。途中で家族が昔住んでいた街に寄ることになるのだが、間のズレた「過去の人々」の振る舞いや、「賞金が当たった」という噂が街を駆け巡ってじゃんがじゃんが…がどうにも笑える…という話。疲れたときに観るといい。

監督は、『アバウト・シュミット』(About Schmidt)や『ファミリー・ツリー』(The Descendants)のアレクサンダー・ペイン。こういう、ちょっと可笑しな人の有り様というか機微をつかまえて表現するのが上手な人だ。この哀しくも愛すべき生き物、人間、という感じ。『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』という邦題は言い過ぎだと思うが、実際そうで、この誰も望まないヘンテコな旅を通じて、次男の父親を見る目が変化していく。そこが何ともいいのだ。その意味で『リトル・ミス・サンシャイン』と似たところがある。

旅の始まりが予期せぬもので、途中にしょうもないすったもんだがあったり多大なる迷惑を被ったり、でも何かあるかもしれない(なくたってまあいい)。教育の実践というのは、この次男のような「忍耐」を絶えず求められ、すぐには実らない、それどころか自分が直接接している間には実りをみることはないかもしれない営為なわけで、「どうか短期的な『成果』に左右されず、種を植え続けてください。この親子のような変化がいつかどこかで訪れるかもしれないから」と先日の謝恩会でこの映画を紹介した(アレクサンダー・ペイン監督はオマハ出身で、静岡市はオマハと古くから姉妹都市提携を結んでおり、ネブラスカ大学オマハ校が静大生の主要な留学先の一つだということもある)。

英語教育関係者には、同じ監督の『サイドウェイ』をリメイクした『サイドウェイズ』という映画もぜひオススメしたい。こちらも(日本人4人がカリフォルニアで繰り広げる)しょっぱいロードムービー。英語が話せること・話せないことによるコミュニケーションのあれこれも面白いが、冒頭に、高校教師を辞めてロサンゼルスに1年間ホームステイしていたことがあるという主人公(小日向さん)が、空港で話しかけられて全く応答できず、「当時は詰め込み型の受験教育が幅を利かせていて、生きた英語など教えてもらえる環境ではなかった。本当だ、本当なんだ」と言い訳ナレーションするシーンがある。たった1分程度だが、この括り方と皮肉に、英語教育に対する見方が色々凝縮されていて興味深いと思う。

『ネブラスカ』は、静岡では4月19日より上映

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