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[本145] 小国『戦後教育史』

[本145] 小国『戦後教育史』

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淡々とした文章でそれほど読みやすいとは言えないが、教科書的な通史程度では出てこない関係者の名前や当時の教師・子どもの声など、経緯や事情が比較的詳しく書かれており、教育学を学ぶ者は一読して損はしない。数字や引用も豊富。たとえば教科書採択の広域化のくだり(pp. 97−98)などは、広域採択制自体は知っていても、種類数の変遷のデータと併せて素直になるほどなと思った。

全体として、副題にある「貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題」といった切り口から子どもたちの「排除・周縁化」を描き出そうとした戦後教育史なので、好みは分かれそうだし、個々の記述に疑問を持つこともあるだろう。そういう評価ができることが一つの到達とも言えるので、教職課程の学生が独力で読み通すのはややハードルが高いかもしれないが、授業で批判的に取り上げてくれると嬉しい。

例えば著者は(これまでのトーンとは対照的に)大空小についてかなり好意的に記述しているが、特別支援学級を一切設置しない大空小が特別支援学級のための加配教員を置いていたことは『授業づくりネットワーク』No. 45の記事(「『みんな』で夢を求める学びと、零れ落ちる子どもたち~発達障害から肢体不自由まで~」)で加茂さんが指摘している。そういう裏も含め、事実を多面的に評価できるようになるきっかけの文献として広く読まれるとよい。

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