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英語教育2.0 ~my home, anfieldroad~の第5回・英語教育ブログ一斉更新企画に参加します(参加ブログの一覧はこちら

今回のテーマは,「生徒に、『なんで英語なんか勉強しなくちゃいけないんですか?』と訊かれたら,何と答えますか」です。

実は,この質問については,自分が担当する授業でも学生に投げかけて,ロールプレイをしてもらうことがあります。いくつか想定される答えの中で私の好みというか,私自身が英語を教えている時に学生・生徒にそういうことを言われたらこういう答えが先ずは浮かぶというのはあるのですが,この記事を見た学生が変に影響されたり阿ねったりしてしまうとイヤなので,ここに私の答えを直接,書くことは憚られます。むしろ,参加ブログの中の多くの先生の意見に触れて,自分なりの答えを練り上げて欲しいと思います。

この問いにどういう答えがあって,これまでどう考えられてきたかについては,寺沢拓敬さんが書いている通り,『「なんで英語やるの?」の戦後史:《国民教育》としての英語、その伝統の成立過程』が来年出版されたら(買って)読むといいでしょう。

と友人の発売前の本を宣伝したところで,ここでは,私がこの質問を学生に投げかける意図を述べます。少し古い用語を用いて端的に言えば,

  • 道具的(instrumental)動機づけ
  • 統合的(integrative)動機づけ

といった概念を導入し,自分がした説明がどちらの性格を持つものかを考えてもらうためです。

私がいま接している学生には,統合的動機づけや内発的動機づけで,つまり音楽や映画,演劇,文学等々,英語圏の文化に興味があったり純粋に英語(を使うこと)が好きで英語を学習してきたという学生が多くいます。一方,就職や留学,進学のためにという明確な道具的意識をもって英語を学習している学生も多くいます(もちろん一人の中で重なっていることもあります)。これまでロールプレイをやってきた印象では,生徒に向けてだと前者のほうが多く語られるように思いますが,それぞれの英語(学習)観が生徒に対する言葉にも反映されます。

私は,彼らが教師になった時,自分の英語(学習)観を絶対視して生徒に押し付けるのだけは止めてほしいと思っています(自分はこう考えてやって来たけどもという語りはあっても構いませんが)。これも私が経験してきた限りの印象ですが,英語が好きで得意だった学生や先生たちは「いい成績を取るため」とか「受験のため」といった外発的動機づけや道具的動機づけを批判しがちです。しかし,いい成績を取りたい!と一生懸命英語を勉強している生徒の考えを否定することに果たして意味があるでしょうか?あるいは,どうがんばっても英語自体に価値や興味を見出せず「なんで英語なんか勉強しなくちゃいけないんですか?」という問いを投げた生徒に,道具的動機づけに訴えることが全く効果がないと果たして言い切れるでしょうか?逆も然りです。

生徒にどちらの(あるいは両方の)具体例を示せば納得を得られるかは,杓子定規に決められるものではなく,その生徒がその言葉を発した背景と,その生徒が教師に求めているであろう対応を考え合わせて判断すべきことのように思うのです(大半はこの言葉の含意のほうが問題で,もっと違うレベルの言動が求められている場合もある,というか多いでしょう)。

実際,道具的動機づけに基づく学習者のほうがうまく行っているという研究結果もあるようですし,1人の人間の中でさえ,それまでの経験や取り巻く環境の影響を受けて2つの動機づけは混じり合っているものです(Lowen & Reinders, 2011, p. 94)。それ故,自分がどちらかに偏っているとしたらそのことに気づいて,できるだけ早く自分や生徒の英語(学習)観を相対化できるようにという意図でこのようなプロセスを授業の中に設けている次第です。

「なんで学校に英語なんていう教科があるんですか」だと,またいろいろと違ってくるところもあるのですが。

補足として,Lowen & Reinders (2011)の道具的・統合的動機づけの説明を引用しておきます:

Instrumental motivation is a type of motivation that is characterized by the learner’s desire for some type of gain or advantage from L2 learning. For example, learners may wish to study the L2 because they believe that knowing the L2 will allow them to get a better job. Another example of instrumental motivation is when learners study a language in order to meet an institutional requirement. Instrumental motivation contrasts with integrative motivation, which involves a desire by learners to be associated with the culture and speakers of the L2. In general, instrumental motivation is considered to be somewhat less effective than integrative motivation for L2 learning; however, it can be difficult to distinguish the two types of motivation. Additionally, in some research studies, instrumental learners have been found to be more successful than integrative learners. Instrumental motivation is similar to extrinsic motivation because often the goals that the learner is aiming for are imposed by external forces (Lowen & Reinders, 2011, p. 94).