レビュー
[本092] 佐藤『英文法を哲学する』

[本092] 佐藤『英文法を哲学する』

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この本が重くてなかなか読み進められなかったのは、私がまがりなりにも文法指導を専門とする人間だからだろう。

これまでに数多出されてきた(認知言語学の知見などをいいとこ取りした)感覚的説明を散りばめた英文法解説本と同様、読み流そうと思えばサッと読める。なんとなくわかった気にもなれる。実際そう読む人が多いのかもしれない。しかし本書は、文法指導について経験があればあるほど、それについて考えたことがあればあるほど、思わず立ち止まって、自分が持つ知識や既存の説明と付き合わせて考えずにはいられない。この本からどれだけ知恵を汲み出せるかは、読むのにかかる時間に比例すると言ってもいいぐらいだ。まるで著者の代表的訳書であるベイトソンの文献のようだ。

文法指導だけを扱う授業やゼミがあれば本書と格闘してもらってもいいが、読みやすい文章だからといって軽々に学生に薦める気にはなれない。玄人だけが手を出してよい文献だと思う。パイクの概念を借りて言えば(該博な知識と身体的英語感覚に支えられた最上級の)イーミックな文法解説。エティックな解説に慣れている日本の英語学習者には受け付けない人もいるだろう。

クリスマス・ツリー型と盆栽型の対比や、SVOと(SVCではなく)Cの、大胆だが、なるほどの区別が白眉。もっと言えば、英語における補語の位置づけ。加えて、TO不定詞も加えた「相」の包括的再整理と、日本語との比較における「法」の解説が秀逸(「直接法」はどう説明しても、なぜそういうものがあるのかなかなか腑に落ちないことがほとんど)。これを私の言葉にして学生や先生方に伝えられるようにならなきゃね。

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