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[本096] 大山・清田・西山(編)『多言語化する学校と複言語教育』

[本096] 大山・清田・西山(編)『多言語化する学校と複言語教育』

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過日、高校の先生とのミーティングで立て続けに相談されたのが、ALTとのティームティーチング(TT)のことだった。

こうした状況を捉える上で、

の特にピアース・ダニエル・ロイ「『多様化』を唱える小学校外国語教育の課題: 日本の小学校における外国語指導助手の表象と現実をめぐって」(pp. 93–112)は一読の価値がある。

なぜ上記のような相談が寄せられるかといえば、英語使用者としてのALTと授業運営者としての学級担任の役割分担を記載する『小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック』だけでなく、学習指導要領でも指導方法の工夫を行うことを求めるだけで、「ティーム・ティーチングの具体的な進め方についての規定が一切ない」(p. 95)からである。

著者は、ALTを「言語エキスパート(モデル)」としての役割よりも、「文化的インフォーマント」と捉える方が教育的意義があるかもしれないと訴える。昨日は、ALTが2年生の授業に参加するのが2週に一度だということで、そうした環境条件に合わせて、単元デザインの中でのALTの位置付けについてアイデアをいくつか提供したが、それに加えて「時間がある時には先生と最近の出来事や教科書の文章についてぜひ何気ない会話を」と私が求めたときのALTの役割はこの「文化的インフォーマント」のイメージに近い。本書を読んだのは昨夜で、この言葉に言及することはできなかったのだが(もともと相談を受けた高校の在籍者の1割が外国籍だというのを聞いて、積んである本から優先度を高めて手に取った)。

昨今の情勢と合わせてわれわれが知っておくべきこととして、「英語圏は、国によって差こそあれ、物価も賃金も上昇しており、ALTの報酬は英語圏出身者にとってもはや魅力的ではなくなっている。杉本・山本(2019)は、英語圏出身のALTとフィリピン出身のALTを対象に調査を行ったところ、志望動機として報酬を上げたのはフィリピン出身ALTのみであったことを明らかにした(同書: 190)。ALTの需要が変わらない限り、英語圏出身者を招致することが困難であり、したがって英語圏以外のALTがさらに割合を増すことが予想される」(p. 98)。私自身は英語圏以外のALTの割合が増えること自体がプラスであるともマイナスであるとも思わないが(日本が貧しくなっていることは教育環境にとって間違いなくマイナスであるものの)、ますます上記の高校のALTにはいろいろ話を聞いてみたくなった。

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