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[レビュー078] 大津・南風原(編)『高校入試に英語スピーキングテスト?』

[レビュー078] 大津・南風原(編)『高校入試に英語スピーキングテスト?』

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いただきもの。私自身も含めWebやSNS上で散々議論してきたことなので、いまさら書籍?と思うところもあったが、実に必要な一冊だった。問題が端的かつ切実に整理されている。

特に英語教育関係者以外に、コトの経緯と問題の確信を伝えるのに本書はうってつけだ。どの章もだいじだが、南風原先生と羽藤先生の章は特に刺さる。

例えば「このように、制度的にESAT-Jを不受験となってしまう生徒がいて、それらの受験者に対する措置において、事前に予測できるような系統的な誤差が生じることは、入学者選抜の方法として公平性に欠けると言わざるを得ません。いわば、制度に組み込まれた不公平が存在することになります」(p. 26) とか「また、たとえば79点と65点は段階別評価ではともにBとなり、数値換算では同じ16点となります。それなりに時間をかけて実施し、採点して得られた得点差をこのようにつぶすことは、テスト結果の持つ情報量をみすみす捨てることになり、コストの無駄遣い以外の何ものでもありません」(p. 29)とか。

こういう、専門的知見にもとづくわかりやすくクリティカルな指摘を、『英語教育』誌その他で、テスティングを専門とする英語教育関係者、あるいは都の中等教育に関わる研究者が述べたことはあっただろうか。大学入試への外部試験導入問題のときに既に一度、英語教育関係者の大半は私の中で死んだが、学校英語教育が滅ぶまで死に続けるのかもしれない。

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