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何らかの文法指導・学習とコミュニケーション活動は、別々に行うのがいいのか一緒に行うのがいいのか。あるいはPPP型とTBLT型のどっちがいいのか戦争。

概要は以下の通り。

本研究では、第二言語学習および異なるタイプの知識の発達に対する潜在的寄与に関して、2タイプの、形式に焦点を当てた指導(form-focused instruction, FFI)の効果を比較した。2タイプの指導はともに、前もって計画され、教師が作り出す本来的に事前対応的な(pre-emptive, 事後対応的ではない)ものであった。統合型FFIでは、形式に対する注意はコミュニケーション活動の中に埋め込まれ、分離型FFIでは別々にされた。第二言語として英語を学ぶ成人学習者2グループがそれぞれ、受動態構文に関する12時間の統合型FFIないしは分離型FFIを受けた。筆記文法テストと口頭コミュニケーション・タスクに関する時間経過に伴う学習者の向上に統計的に有意な差は見られなかった。しかし、口頭産出タスクに対しては統合型FFIに、筆記文法テストに対しては分離型FFIにいくつか利点が観察された。この結果を、指導を受けた第二言語習得研究,特に転移に見合った処理理論(transfer appropriate processing theory, TAP)との関係で論じる。

「PPP型とTBLT型のどっちがいいのか戦争」と言っておきながら、二者択一に捉えるのはあまり生産的ではない。Ellis (2003)はコミュニケーション中心の授業からだんだんと文法に焦点を当てた部分を増やしていく「モジュール・アプローチ」(並列型、バリエーションとしては逆もあり得る)を提示しているが、松村 (2012)はそこに「交替型」の可能性を提示している(浦野研先生(北海学園大学)のブログ記事「PPPについて」を参照)。私(というより出身研究室)はもともとカリキュラムで言えば交替型を提案しているので(亘理, 2008)、この点について考える素材の一つになるかと思い読み始めた次第。この研究は、並列したり交替したりということではなく毎時間をPPP型とTBLT型でやり続けた2グループ(カナダに来たばかりの18歳から65歳の様々なL1の全109人4クラス)の比較なので、そういうカリキュラム・レベルの話には距離があるものの。

非常に残念なことに、現実的制約によるものだろうが、事前テストの時点で統合型FFIグループ(n = 35およびn = 31)と分離型FFIグループ(n = 32およびn = 32)の得点が大きく違いバラつきも大きいので(Methodの冒頭では「4クラスは全て中級」と書いてあるが、まあこれもそこの学校の大人の事情だろう(涙)。当然、統制群も置かれていない)、そもそも比較し得る対象とは思えず、要旨に書かれた主張もspeculativeなものに過ぎないと結論で断ることとなっている。事後、遅延事後と進むにつれて各クラスの人数も減少しており、なんだか哀しくなってしまった(遅延事後テストを受けたのは、統合型-筆記 n = 17, 分離型-筆記 n = 29, 統合型-口頭 n = 19, 分離型-口頭 n = 28で93人になってしまった。しかし最初は35, 32, 31, 32人だったので約28%の減少。あれ、109人の参加者と書いてあったけど、複数クラスに所属していた人がいる?だとすると練習効果というか受けた指導の条件ががが???)。事前テストの得点が対応するとみなせるペアを取り出して分析も行っているが、筆記文法テストに関してはn = 7、口頭産出タスクに関してはn = 10と、検定に耐え得るものとはなっていない。

Theoretical and empirical backgroundの部分の記述は面白くて、なるほどそういう風に意味づけて、整理して持っていくのねと参考になった。のだが、TAPの解説をして紹介を始めようと思って読み進めたらこんな具合だったので、その辺をまとめる気概は失せてしまいましたとさ。合掌。

Standing on the shoulders of giants … tremblingly.