[本012]『歌うカタツムリ』(千葉, 2017)

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完全に趣味の読書。

トップページの黒板にも描かれているように、カタツムリはわがゼミのいわばシンボル(2017年9月現在、通算第172号を数えるゼミ通信は「かたつむりのきせき」)で、こんなタイトルの本が出たら読まずにはおれない。

やや読むスピードが落ちるところもあったが、おもしろかった。特殊を介して語られる普遍をどのくらい読み取れるかはこちらの知識に依存するところもあるが、個人的には第7章以降(前半から中盤にかけての話が繋がって収束するからかも)。学部生の頃にp. 187あたりの話に出会ってたら、うっかりそっちの道に誘惑されたかもしれない。

分野が全く違っても考えさせられることが多く、普遍を語る記述は随所でなかなかシビれる。

では、螺旋を新しいステージに前進させるものは何か。そして螺旋からの脱却を促すものは何か。たぶんそれはどちらも同じ。新しい出会いと偶然の力だろう。(中略)取捨選択の歴史は未来を制約し、出会いと偶然は、その制約から未来を解放するのだ(pp. 4–5)。

出会いと諍いは、いずれも新しい研究の推進力である(p. 144)。

多様性の本質は、正解が一つではないということだ(p. 151)。

解決への道は、理論と実験室とフィールドの果てなき研究サイクルなのである(p. 192)。

ゲームを支配する最も大きなルールの一つは、トレードオフだ。トレードオフのもとでなされる戦いには、絶対的な勝利はない。勝つためには、別の何処かで負けなければならない。だから、誰にでも、いつかどこかで勝つチャンスがある。このような戦いの中では、偶然が果たす創造性が最大化される。だから多様性が生まれるわけだ。/トレードオフを作り出すのは、歴史に由来する制約だ(p. 197)。

引用は控えるが、第9章の最終段落(p. 198)にたどり着いたとき、あまりのカッチョ良さに思わず蛍光ペンを強めにグリグリしてしまった。ときどき控え目ながらウィットに富む文章があって、例えば次の一節。

歴史を知れば、新しい見方ができるようになる。だが、それは歴史の一面だ。逆に歴史が、私たちのものの見方や考え方を拘束し、自由を奪うこともある。3.14は何ですか、と聞かれて、「円周率!」とマッハのスピードで答えるも、ホワイトデーに思いが及ばない勉強熱心な甲斐性無しがその例である。これは生物進化でも同じかも知れない(p. 102)。

とにもかくにも、全編通じて、登場人物全員マイマイにまいっちんぐなマニアぶりがアツい。こういう本を読むと、岩波科学ライブラリーばかり読んで暮らす毎日だったらどんなに幸せだろうと思う。

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