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ご恵投いただいた、

について。

職業柄、巨人の肩に乗る時はtraceabilityが重要だと考えているので、何らかの理論やアイデアが提示される時は、直接・間接の典拠を提示して欲しいといつも思う。例えば、本書の著者たちが実践を通じて試行錯誤を重ねてきただけでなく、これまでに多くの文献を読んできたことは自明で、それが血となり肉となって本書(や過去の著書)に結実しているのだから、学生に活動を紹介し先人の知恵を伝える際も、紹介者の責任としてはそこまで辿った上で紹介したい。それ故、正直に言ってしまえば、本屋の教師向けコーナーに並ぶお手軽なマニュアル本の類は、そうした典拠が省かれがちで、昔から好みではない。

だが本書は、「お手軽」本とはひと味違うものを感じさせる。

一つには、著者たちの哲学が少なからず開陳されていることがある。その意味で私は4つのColumnを最も興味深く拝読した。本書を手に取る先生がたも、各ページの授業づくりのアドバイスや具体的な活動アイデアを、著者たちの哲学や座右の銘と照らし合わせて読まれたい。そして、どういう経験や思考を経てそれぞれの活動に至ったのかをよく考えてもらえれば、本書は「お手軽なマニュアル本」ではなく、優れた教師教育の性格を有するものとなるだろう。でもやっぱり参考文献は丁寧に示してほしい(業界全般に言えることではあるが)。

もう一つには、実用性の面でもコンパクトによく整理されていると感じることがある。私は上述のような理屈をこねる立場ではあるが、忙しくて背後の理論を噛み締めている余裕なんてないよ分かれワタリという学生や先生たちに紹介するなら、結局のところ実践的にその質ができるだけ高いもの、つまりできるだけ生徒にとって楽しい授業につながりそうなものを選ぶだろう。本書は十分その一冊の資格を満たしている。私の好みと違う部分はあったとしても、なんせ根本において折り紙付きの実力と経験を持った(どこの木の股から生えてきたかわからない私なんかと違って)ちゃんとした先生たちの手による本なのだ。

さらに言えば、基本指導スキルから入って、語彙指導やスピーキング指導の勘所を抑えた上で、技能統合型の活動の紹介へと進み、劇やポスター制作、弁論大会参加までを射程に入れる本書は、全く「お手軽」ではない。英語によるやりがいのある活動を本気で生徒とやりたいと思っていなければ、そしてその過程の喜怒哀楽を背負う覚悟がなければ、おそらくどの活動も中途半端に終わるだけだろう。

口の悪いことを言えば、以前から著者たちのことは尊敬してやまないが、著者らのような「達人」を教祖のように奉ったり、上で批判したような「お手軽なマニュアル本」にすがる人たちのことは昔から嫌いだ(すがる事情や心情は理解するが、それでも好きにはならない)。だから本書Part 3の「定年を目の前にして、先生方に伝えたい20のこと(辛口)」はとても良いと感じた。嫌われる覚悟を持ったベテランの苦言が清々しい。若さや見栄えのする「成果」に迎合したり、お追従で従ったりする馴れ合いを目にすることはこの業界では少なくないが、それは平たく言ってみっともない。こうやってはっきり叱ってくれる人がいる内が華だし、本当の意味で「達人に学ぶ」のであれば、その叱咤を吹き飛ばすような新たな授業観や具体的実践を見せつけて、著者たちの活動アイデアを凡庸なもの、あるいは時代遅れのものにして「反論」しなければならない。

それにはまだまだ長い時間がかかりそうだと思わせてくれる一冊。学び続けるベテランは手強い。