レビュー
[本063] 細川『自分の〈ことば〉をつくる』

[本063] 細川『自分の〈ことば〉をつくる』

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古くは『複言語・複文化主義とは何か』や最近では『対話をデザインする』でお世話になってきた細川先生の信用買い、ということで。

案外、これから卒業論文・修士論文に取り組む学生・院生や、論文や記事を書こうとする先生がたにはこういう書くことについての考え方の整理が必要なのかもしれないと思って読んだ。

本の作りやターゲットからしていた仕方ないところではあるが、自己啓発的な調子が好きになれないところもある。しかし、振り返ってみれば、自らの思想を表現するということについて、あるいはそれをどう言語化するかについて、私自身も大学の最初の頃に、学者や作家、ジャーナリストが書いたその手の本を読み漁っていた時期があり(内田義彦さんの文献のみならず辰野和男さんとか)、レポートや論文だけでなく、ゼミのMLその他を通じてずっと書いてきた。その頃に本書があれば喜んだかもしれない。

また、上記の延長線上に今の私のSNSやブログ、論文や書籍、原稿料をもらって書く商業誌などの記事での表現があって、いずれも私の中ではそれぞれ明確な対象や目的の区別があるので、本書で書かれていることを今更思い悩んだりはしていないが、SNSや動画を通じてなんとなく発信することに仕向けられ、一方でその視聴数や反応に影響されざるを得ないところから表現をスタートしている世代、長期にわたる表現活動のプロセスとの格闘を経験したことがない(pp. 160-161の図がまだピンとこない)者には本書が救いをもたらすのかもしれない。

言語教育関係者が最も面白く読むのは、間違いなく最後のエピソード「自分のことばで語るときまでーー千葉くんの挑戦」だろう。彼の表現を通じて、書くことを通じた変容がはっきり見える。

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