レビュー
[本098] 千葉『現代思想入門』

[本098] 千葉『現代思想入門』

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千葉さんの本を初めて読んだ。

後半はさすがに入門と言えども専門以外の学部生にはつらいかなと思うが、前半、特にドゥルーズの章とフーコーの章は非常にわかりやすくて、今までこういう明快かつ痒みを解消してくれる解説はなかったのですこぶる感心した。全体を通じてカント、ニーチェ以降のダイナミズムがぐわっとつかめるし、付録の「現代思想の読み方」は読書一般に通ずるところもあって有用だ。

哲学(的議論)に馴染みのない人にとっては前半もなんのこっちゃと感じるかもしれないが、本書を通じて誰かと「こういうことだよね」、「あれみたいな話」とワイワイやれば学部生でも十分いけると思う。千葉さん自身がそういう感覚を持って書いてくれている。もちろんそれなりに咀嚼してきた人にも洞察をくれる。

意外と教育に関する思考も触発された。例えば同一性と差異、あるいはアポロン的なものとディオニュソス的なものの区別がアリストテレスの形相と質量という対立にまで遡るという話。授業研究において、教師の側の手続きや型から見ようとする流れが、授業中の実際の子どものあらわれから捉えようとする視点へと変化してきたのは、これと同様のニーチェ的展開と捉えることができる。あるいは教育関係者の中でも、規律訓練(道徳的なものや、意欲・態度面の評価)に警戒感を持つ者より、学校の生政治的な統制を違和感なく受け入れてしまっている人のほうが多いのではないか、等々。

著者と世代が近いので、あとがきの「『現代思想を読む事典』を拾い読みして」という感覚、とてもよくわかる(学生時代に講談社現代新書を小さい番号から片っ端から読んで過ごしたが、同書は私も特にお気に入りだった)。いま手に取ってみたら、「マルクス主義」の項に付箋があってある一方で、「コノテーション/デノテーション」のそれぞれの説明に線が引いてあった。授業で出てきたんだろうな。

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