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[雑感119] 2022年度をふり返る(授業・社会貢献活動編)

[雑感119] 2022年度をふり返る(授業・社会貢献活動編)

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2022年度にした仕事について(授業・社会貢献活動編)。

ゼミも含め、担当する専門科目がほぼ全面展開された。教育実習を除けば、私が担当する範囲の全体像が見えたというところ。

  • 入門ゼミ (1年次)
    • 『アカデミック・スキルズ(第3版): 大学生のための知的技法入門』(慶應義塾大学出版会)

昨年度に続いての1年次対象の必修科目で、想定通り今年度は18クラスの代表取りまとめ役も担当。昨年より思うようにはいかなかった印象。個人としてよりも学部のプログラムとしての意識が強かったということもあるが、昨年度から改善を試みて全体としてうまくいったこともあれば、それほどうまくはいかなかったこともある。想定外に入学者が多くなり、クラスサイズが膨らんだこともある。学部内ローテーションで、ひとまず2年間はお役御免。

  • 英語科教育法Ⅰ (3年次)
    • NEW CROWN English Series, Books 1−3(三省堂)

ちょっとややこしいが、国際学部のカリキュラムでおもしろいところは、英語科教育法の2科目の履修順序が専修によって異なるところだ。英語学・英語教育専修の学生は、下の「英語科教育法Ⅱを自専修科目として2年次秋学期に履修できるので、3年次以降対象のこちらの科目の履修が基本的に後になるが、他専修・専攻の学生は逆に、「英語科教育法Ⅱは3年次秋学期以降にしか履修できないため、通常こちらの科目の履修が先になる(ナンバリングはこちらに合わせたものとなっている)。3年次が初めてなので、この順番が与える影響ともう一つの授業との接続については今後も注視して必要な改善を施していきたい。

火・木週2コマの4単位(30回)構成を活かして、冒頭のsmall talkを輪番で担当してもらいつつ、検定教科書ベースの模擬授業をゴリゴリやった。「英語科教育法Ⅱ」を経験していない学生のために、前半に教材研究・授業構成の視点を駆け足で扱って、それ以降は中学校2年→3年→1年の順で、3年間をさまざまなパターンで網羅した。ただし、やりっ放しにしたくないので、前の週の省察・グループでの教科書検討・模擬授業1(火曜) → 改善案共有・模擬授業2・事後協議(木曜)というサイクルで、各学年3、4レッスンに絞って扱い、大きいサイクルとして各学年で活動や言語や題材について複数回フォーカスするようにした。「考えて、やってみて、改善してまたやってみる」というTEACHER(S)モデル(亘理, 2019)を模擬授業について実装したわけである。参考文献には、太田(2016)加賀・大橋(2017)を挙げておいた。

学生は十分な準備時間なしに授業を構想する際の自身の知識や引き出しの不足を実感したに違いないし、「ああしたかった、こうしたかった」の気持ちのほうが多かったかもしれない(実際その気もちを引き出したかったデザインなわけだ)が、さながら模擬授業の乱取り稽古の成果はやはり、模擬授業に臆することがなくなったということだろう。授業者は変わっても模擬授業2で学生は少なからず改善を実感し、同じ授業を多面的に味わうことができ、週2コマを効果的に使えたと感じる。全員が毎回、授業者になる可能性があり、半期の間、始終、模擬授業が頭から離れない状態だったのは我ながらヘヴィだなと思うものの。3学年を通したNEW CROWNの良さと課題について、私自身が学ばせてもらったところも多い。

  • 英語科教育法Ⅱ (2、3年次)
    • 『よくわかる英語教育学』(ミネルヴァ書房)

昨年と比べ履修者数が倍近くになったので、シラバスの編成には気を遣った。グループでのリレー単元がメインだが、こちらもいきなり模擬授業に臨ませたくはなく、2年生は初舞台となるので、ソロでの自由演技の機会もきちんと保障してあげたい。2年目ということで内容の圧縮にはそれほど苦労しなかったものの、ただでさえ詰め込んだ内容がさらに駆け足となって、省察を深める時間がやや足りなかったように思う。

人数が増えたことの利点として、40人規模とまではいかないまでも、実際の授業に近い雰囲気で、集団に指示を届けたり動かしたりすることの難しさや多様な反応、目の届かなさなどを実感できたことが挙げられる。昨年度の「入門ゼミ」や英語の授業で出会ったメンバーを中心に、教職課程を履修していないメンバーも複数いたので、その意味でも昨年度と違った面白さがあった。2023年度は新しいことに挑戦しつつ、もう少しじっくり単元づくりに取り組みたい。

  • 英語科単元構成論 (3年次)

主として上記2科目を終えた学生向け(他専修は英語科教育Ⅱと同時並行になる者もいる)の授業で、複数回の授業観察経験を中心に置きつつ、アセスメントから単元構成を考えることを主眼とした。概ね、前の週の省察・トピックに関する活動とディスカッション・トピックに関する講義(火曜) → 評価規準/基準に関するグループ協議と共有・トピックを踏まえた模擬授業&観察・事後協議(木曜)というサイクルで、私の引き出しを惜しみなく開けて活動を放り込んだ。

模擬授業の担当は事前に割り当てたが、トピックの内容は火曜の授業を受けてみるまで分からないので、模擬授業者が短い期間で準備をしなければならなかったのが(英語科教育法Ⅰの「乱取り稽古」の成果はここで発揮されたとは言え)申し訳なかったところ。生徒役とは別に、交代で3、4人を観察者として立てて、観察者の視点を中心に事後協議を行なった。

評価規準/基準については、「英語科教育法Ⅱ」では駆け足で触れた程度なので、考え方・作り方を説明した上で、火曜に体験したいずれかの活動を指定して段階的に作成経験を重ね、後半は評価資料との対応も検討した。グループで議論した規準/基準を前に書き出してもらって、私がツッコミを入れたりコメントしたりしながら共有。序盤はどのグループも言語化しあぐねていて、なかなか苦しいなと思っていたのだが、中盤以降、思考・判断・表現についてはかなり的を得た規準/基準が立てられるようになり、それが授業観察・事後協議のほうにも波及して好循環が生まれた。第1週目がオンライン授業であったことを利用して奥住桂先生(現・埼玉学園大学)をゲスト・レクチャーとしてお招きしたことも大きく、その時に話してもらった枠組みがちょくちょく参照されたりもした。

  • 英語学・英語教育演習Ⅰ・Ⅱ(英語科教育学ゼミ) (3年次)
    • Richards, J. C. (2015). Key issues in language teaching. Cambridge University Press. Cambridge University Press
      • Part 3: Language and the four skills (pp. 297–545)
    • 佐藤 慎司・佐伯 胖 (編) (2017).『かかわることば: 参加し対話する教育・研究へのいざない』東京大学出版会.
    • 浦野 研・亘理 陽一・田中 武夫・藤田 卓郎・髙木 亜希子・酒井 英樹 (2016).『はじめての英語教育研究: 押さえておきたいコツとポイント』研究社.
    • 小熊英二 (2022).『基礎からわかる 論文の書き方』講談社.

ゼミについては始まる前にこちらで紹介したのだが、やってみて、春学期のRichards (2015)と佐藤・佐伯(編) (2017)の検討はとても良かったし、秋学期も全員が3回の報告で論文3本ずつを読み、私自身、24本も論文を読む機会を得て、大いに勉強になった。英語の論文を最低1本含めるのが条件だったが、結局、英語論文のほうが多くなったぐらいで、ゼミ生の頑張りにとにかく感心しきりの1年だった(秋学期に検討した論文の一覧はこちら)。春学期は、2週に一度、総合ディスカッション、あるいは「自由演技」の時間が用意されていたのだが、これも担当それぞれの個性が出てとても良かった(ゼミ生も手応えを感じていたようで、2学年揃う来年度は時間的に難しいかなと考えていたが、彼女らのリクエストで継続することにした)。

秋学期前半のリサーチメソッド講義は課題も含めかなり苦労していた様子だったが、自分の卒論テーマについてよく考えて、2週に渡る卒論第0次発表会も堂々とやりきった。まだまだスカスカというよりも、この時点で既にあれもこれも欲張りにやりたがって絞り込みが必要な段階にいるというのが彼女ららしいし、誇らしいところ。基本的に「(外国語の学習は)辛くて当たり前」、「大変なもの」という感覚が強いこの分野、例えばextensive listening/readingについて「もっと楽しく、誰もが」を重要視して追究しようとしてくれている辺り、中京大国際学部・英語科教育学ゼミここに在りという感じで嬉しい。卒論発表会の詳細を詰めるのはこれからなので、その試行という意味も込めて第0次発表会を公開にしたが、ゼミ生たちも緊張感を持って臨むことができて成功だった。ゼミに加わる後輩だけでなく、他専攻の同僚や他学科の学生ものぞいてくれて、質問やコメントも全員にたっぷり出たし、発表後も研究デザインについて話が尽きず、早くも卒論ズ・ハイになっている姿も微笑ましかった。

それ以外にも春学期は、静岡大学・河﨑美保ゼミと、秋学期は異文化コミュニケーション専修・外国語学習論、齊藤公輔ゼミとの合同ゼミを開催することができた。特に齊藤ゼミとのコラボは準備も大変だったと思うが、視野が広がって非常に得るものが多かったと思う。河﨑先生・齊藤先生、そしてそれぞれのゼミ生の皆さんに感謝するばかりである。恒例の合同ゼミ合宿は全面対面とはいかなかったものの、北陸大学チームも加わり、ハイブリッドで名古屋で開催した。信州・山梨との合同ゼミ合宿の経験がない3年生のみでのホストだったが、このメンバーならいけると信じ、3コースに分かれた観光含め、実際よくやってくれたと思う。

上記のほとんど全ての振り返りがYouTube動画に収められている。ゼミ通信とは別に毎回YouTube動画が制作されたのも本当にすごいことで、私が何かをしたというよりも、彼女らがゼミをひつまぶしのように何度も美味しく味わえるものにしてくれた。限界は無いということをいつもゼミ生が教えてくれる。

こちらでも紹介したが、ゼミ生有志に、参加希望のあった他大学の教員・学生をオンラインで加えて春休み終わりまでで結局15回を開催した。

本当はその場で音読もできると良かったが、さすがに時間がかかり過ぎるので、読んでくるのは前提として、事前に資料などは準備せず、パラグラフごとに輪番で内容を説明していくスタイル。じっくり一歩ずつ、第4章のイントロを終えるところまで読み進めた。これだけかかるのかという思いと、ここまで読めたかという思いとの両方がある。全員徐々に読めるようになってきたのがわかるし、特に第3章で動詞まわりを徹底的に検討できたので、参加者の深いところでこだまし続けて、のちのちどこかで活きるとよい。

引き続き読む予定だが、来年度中に読み終わるのか2、3年かかるのか。

社会貢献活動、あるいは実践研究は、昨年度と同様の

  • 三重県総合教育センター授業づくり(高校英語)研修講師・公開授業助言者、および高校英語基礎研修助言者
  • 静岡県総合教育センター 令和4年度「新時代に対応した英語指導力向上サポート研修」講師
  • 静岡大学教育学部附属浜松小中学校 校内授業研究会 助言者、および研究発表会パネリスト

に加え、

  • 名古屋女子大学中学校・高等学校校内授業研究会講師

としてオンラインまたは対面での研修に継続的に携わった。附浜小中では、昨年度と同様に藤本和久さん(慶應義塾大)とコラボさせてもらい、藤本さん・常名剛司先生(浜松小中学校)とともに、第2回教育研究発表会2日目のパネルディスカッションでパネリストまで務めさせていただいた(このパネルディスカッションでは、同じタイミングで静大から転出した、コーディネーター・司会の磯山恭子先生と共演するという関係者には興味深い構図となった)。そうする義務はなかったが、おもしろくて、事前に公開された全ての教科の全22時間を観て臨んだ(やり取りせずとも藤本さんもそうだった)。それ故、その週は附浜小中の授業が常に頭の中を廻っていた。語りたいことが多過ぎて、当然磯山先生から与えられた時間には収まらなかったが、ファーストペンギンの藤本さんもそうだったので私もずいぶんはみ出して話した。先生方を目の前にして、あれだけ思いのこもった授業に触れないわけにはいかない。登壇者同士のやり取りが楽しくて、姿の見えない聴衆のことは全然気にしてなかったし、先生方とゆっくり話す時間もなかったのだが、やっぱり藤本さんと授業を観て語るのは楽しいし、その機会をくれた附浜小中には感謝しかない。

三重県は今年、桑名北高校・津商業高校・木本高校を訪問することができた他、津で開催された桑名北高校・津商業高校・尾鷲高校の実践報告会に助言者として参加し、県内の各高校の先生と対面で話せた。何より今年度は、国際学部の学生4名を教育委員会から英語授業PR大使に任命してもらい、各訪問に帯同して一緒に授業参観・事後協議会参加を行えたことが大きい。静岡県の高校との関わりは昨年度と同様オンライン研修についての助言が主だったが、2月のオンラインセミナーで「教科横断の視点とディスコース・レベルの気づき」と題する講演を行い、静岡大学の卒業生やゼミ出身者も参加してくれて、久々に顔を合わせることができた。

附属浜松小中学校の常名先生・和田先生、およびmimi’xについて助言協力をしている(株)鈴木楽器製作所との

  • mimi’x活用コンテンツ研究会

は構成作業を中心に4回開催し、前の記事の通り、付属教材冊子が完成してひと段落。静東教育事務所の稲葉英彦先生(現・静岡大学)と主催する

  • 英語授業を語る会・静岡

は6回開催して、通算で45回。夏に対面開催が実現した。

昨年度に続いて、

  • 静英研西部支部主催スピーチコンテスト 審査員長

を務めた他、

  • 2022年12月18日: 「学校教育の視点から見た、ことばへの気づき」(財)ラボ国際交流センター・東京言語研究所「教師のためのことばセミナー」
  • 2023年3月29日:「ディスコース・レベルの文法指導」ELEC同友会英語教育学会第20回教科書著者による小・中・高教科書指導法ワークショップ

で、講師を務めた。

その他、検定教科書の編集委員として

はこれまで通り。学会運営等は、

  • 日本教育方法学会理事
  • 一般社団法人ことばの教育理事
  • 教育科学研究会『教育』編集委員
  • 北海道教育学会紀要編集委員

で、名古屋にいながらにして古巣・北海道教育学会紀要編集委員を務めた。後輩の力を思いっきり借りたりしたが、地域学会誌の役割を考えるきっかけにもなった。前の(高2、3年にとっては現行)学習指導要領が告示されてわりとすぐに「英語の授業は英語で」、あるいはEMI (English as a medium of instruction)の論点をまとめた拙論が掲載されたのが同学会誌(第6号)で、自分でも意外なことにいまだに参照されたりすることがあるのですが、その恩を少しは返せたかなと思う。

それ以外にもいくつか仕事は増えたが、それはまたいずれ。

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