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手元のファイルを整理していたら、以前読んでアブストラクトだけ訳したものの、まとめることまではしなかった文献のメモが出てきました。

ごく簡単なまとめですが、備忘録として。

概要は以下の通り。

本準実験研究では、演繹的・帰納的・暗示的・偶発的文法指導の効果を比較し、(文法形式の)複雑さがどの程度その結果に影響するかを調査した。中等前期教育で第二言語としてドイツ語、英語、スペイン語を学ぶオランダ人学習者981人が本実験に参加した。本研究のデザインは、事前テスト、比較表現に関する一連の授業、事後テストからなる。メタ言語的知識と文法構造の産出を測定した。分散分析を用いて指導法ごとの学習者のテスト得点の違いを分析した結果、いかなるタイプの文法指導も(明示的形態であれ非明示的形態であれ)、介入・接触が全くないよりも効果的だということが示された。さらに文法構造の複雑さは、その指導効果に影響しなかった。

(統制群を含めて)5 instruction forms × 3 languagesという複雑なデザインで、42以上の学校の協力を得た研究なので、これをそのまま再現するのは難しいと思いますが、比較表現にしぼって、その他の条件の統制にできるだけ努め、事前テスト・処置・事後テストまでの過程を45分×3セッションで実施しているのでその辺は参考になるかなと思います(ただし教材は特に面白くはありませんし、「複雑さ」に関する議論は弱いと思います)。事前テストと、事後のテストの一つは文法性判断課題17問(3つのフィラー含む)で、もう一つの事後テストはイラスト・写真を描写・比較するライティング・テスト10問。

概要には「効果的だ」とありますが、英語を学ぶ学習者に関しては、事後テストでの有意な差は見られませんでした。ただし事前テストからの伸びた(後退した)分で見ると、効果量は大きくはありませんが(Cohen’s d = .46)、明示的・演繹的な指導を受けた学習者のほうが、非明示的な指導を受けた者よりも有意に大きな伸びを示していました。ライティング・テストに関しても、指導法について有意な差が認められ,明示的・帰納的指導条件(d = .83)、明示的・演繹的指導条件(d = .73)、非明示的指導条件(d = .68)のいずれも統制群との間に有意な差がありました。ただし、各指導法の間に差はなく、偶発的指導条件については統制群との間にも有意差は見られませんでした。

結果として以下の考察が与えられています。

  • ドイツ語と英語の結果に基づくと、比較表現の学習に対して明示的な指導法が最も効果的であるという仮説は棄却される。他の指導法との間に有意な差は認められず、どの指導法もやらないよりは良い。
  • スペイン語の結果に基づくと、比較表現の学習に対して非明示的な指導法が最も効果的であるという仮説は棄却される。
  • 「2音節以上の英語の形容詞を用いた比較表現の学習には、非明示的な指導法が最も効果的な選択肢である」という仮説もさしあたり支持されない。
  • ドイツ語と英語の結果に基づくと、比較表現の学習に対して明示的・演繹的な指導法も明示的・帰納的な指導法も同じくらい効果的である、ということは言える。

やはり教材と測定法が問われるべきかな。

Standing on the shoulders of giants … tremblingly.