レビュー
[本158] 大江・大根田『教育現場で役立つ!データ活用術』

[本158] 大江・大根田『教育現場で役立つ!データ活用術』

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小林さん(@langstat)からご指名受けて手に取ったが、あいにくがっつりレビュー記事を書くほどの気持ちにはなれなかった。

これまでに塗れてきた泥の経験から「わかるわかる」と感じる、各方面への配慮溢れる記述も散見はされたが、全体としては「経年の分析に耐える調査を実施している埼玉県のスゴさエラさに皆さん倣うべし」というトーンで、本書が役立つとしても、ここで言う「教育現場」は教育委員会(の指導主事)や各学校の管理職ぐらいだろうと思われる。こういう考え方で教育行政は進められている(実態がある)ということを理解しておく上では、他の先生方もそれなりに得るものはあるかもしれない。

しかし指導主事や管理職の先生方を含め、私が関わる範囲の人に本書を薦めるかと言えばノーだ。全体としては議論の粒度がまちまちで、誰を対象にしているのかがよくわからないからであり、部分的に読むには(少なくとも教科指導に対しては)具体性に欠けていて参考にならないと思われるからである。医療などとの比較や比喩はあちこちに持ち出されるのだが、「頭の良い」人にありがちな抽象度が高いままのたとえで、もっと「個別」を通じて、具体への上向が意識されているとよかったのに、と思う(という評は一般に通じる表現ではないが)。

「常に競争の渦中にいて、国際誌に載せる水準のデータが得られるかどうかで分析に協力するかどうかを判断する」という本書の研究者像も、帯の推薦文を寄せている中室さんや埼玉県に協力する人はそうなのかもしれないが、私の周りの教育関係者に(少なくとも小中高との実践研究や各種事業の分析・評価への協力に関して)そういう人はほとんどいないので笑ってしまった。

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